みなさん、こんにちは。下北沢でキャンプ場のようなカフェを経営しているWAITER-Uのつくいです。今日はキャンプの話ではなく、私の趣味、映画や本についてお話させてください。
映画は大好きでよく見るのですが、監督の背景や時代背景まで深く掘り下げることはあまりありません。しかし、そんな中でものすごくのめり込み、本まで買って色々調べた映画監督さんがいます。それが伊丹十三さんです。
私が伊丹十三さんの名前を知ったのは、大学生の頃に契約したCS放送でした。当時は、地上波以外に専門チャンネルが見られるプランがあり、FOXやANX、カートゥーンネットワークなどを見ていました。その中に、フジテレビ系の邦画チャンネルがあり、そこで偶然見たのが伊丹十三監督の「スーパーの女」という作品でした。
「スーパーの女」には本当にのめり込みました。瞬きするのも惜しいほど、最初から最後まで集中して見入ってしまったんです。その後、「マルサの女」をDVDで借りて見て、同じように引き込まれる感覚を味わいました。そして、「タンポポ」。伊丹十三監督の作品は、どれも同じような感情を抱かせてくれるんです。
「この映画はすごい」と思い、監督について調べてみると、すべて伊丹十三さんだと知りました。そこから、彼の書いたエッセイ「女たちよ」「再び女たちよ」なども全部買って読むほど、深くハマってしまったんです。
「スーパーの女」は本当に面白い作品です。売れていない潰れかけのスーパーが舞台で、新鮮でない肉を平気で売ったり、変色したものをそのまま並べたり。客を大切にしない接客スタイルの隣に、大手スーパーがオープンするという危機を迎えます。そのスーパーを立て直そうと奮闘する物語なのですが、ビジネスや商売、仕事に対する大切な要素が詰まっているんです。それがきっかけで伊丹十三監督の作品が大好きになり、他の作品も続けて見るようになりました。
彼の作品の主人公は、ほとんどが同じ女優さん、宮本信子さんです。実は、宮本信子さんは伊丹十三監督の奥様なんですよね。調べて知ったのですが、彼女は当時、主役の座をなかなか掴めずに悩んでいたそうで、「それなら私の作品で主人公を演じればいい」という形で出演していたようです。
伊丹十三監督は、1997年に亡くなられました。事故死とされていますが、様々な憶測も飛び交っています。その後、宮本信子さんは20年ほど、そのショックからか映画に出演されていなかったそうです。
彼女が復帰された作品が、有川浩さんの小説「阪急電車」の映画化でした。有川浩さんの小説を知ったきっかけは、小説好きの父が感動して勧めてきたことでした。数年後に映画化されると知り、家族で見に行ったのですが、当時は伊丹十三さんと宮本信子さんの裏話などは全く知りませんでした。
映画を見て、舞台となる阪急電車に興味を持ちました。生まれも育ちも関東で、関西の電車の事情はよく分からなかったのですが、阪急電車はとても上品な印象でした。黄色の木目調のインテリアに、上品な緑色のシート。関西の友達も「阪急はいいよ」とよく言っていました。どんな電車なんだろうと、ずっと気になっていたんです。
舞台は阪急今津線という路線で、小林駅などが登場します(宝塚から出ている路線で、途中に小林駅があるという設定だったと思います)。大阪に出張に行く機会はあったのですが、なかなか阪急に乗る機会はありませんでした。そんな中、去年、神戸に行く用事があり、半日ほど時間が空いたんです。神戸は阪神や阪急など、様々な電車が乗り入れています。せっかくなので、ずっと乗りたかった阪急電車に乗ってみようと思い、神戸三宮駅から乗車しました。
その時、初めて行き先を決めない旅をしました。とりあえず阪急電車に乗ろうと特急に乗り、岡本、西宮北口と停車し、終点の十三まで行きました。十三は阪急の多くの路線が乗り入れる駅で、ふと降りてみようと思ったんです。そこで路線図を見ていると、「え、待って、このまま京都まで行けるじゃん、阪急で」と気づきました。
そのまま乗り換えて、全く予定していなかった京都方面へ。京都河原町行きの電車に乗り、桂で嵐山線に乗り換え、嵐山へ。嵐山で降りると、まさに関東人が想像するような美しい京都が広がっていました(京都の方にはもっと違う魅力があると言われるかもしれませんが)。桂川のほとりで、たまたま良い席が取れたお店に入り、京都のおばんざいを肴にビールを飲み、満足して帰ってきました。
なぜこんな話をしているかというと、そもそもこの京都への旅のきっかけは、映画「阪急電車」を見たことなんです。映画に興味を持ち、原作を読んで、そして実際に行ってみようと思った。それは、昔TSUTAYAでDVDを探していて隣の映画が面白そうだったり、本屋さんで探していた本の隣の本に目が留まったりする感覚に似ています。目的の隣にあった、予定外の出会いが、素敵な体験に繋がったんです。
計画通りに進むことが多い現代において、直感で動いてみる、というのも大切なのではないでしょうか。失敗を恐れずに、「とりあえず行ってみよう」という行動が、予期せぬ素晴らしい出会いを運んでくれるかもしれません。もし私が映画や本に全く興味がなかったら、この旅はありえなかったでしょう。
私がいつも、キャンプを軸にしたカフェを経営していると言っていますが、キャンプに行かなくても、本でも映画でもレコードでも音楽でも、何か新しい発見をして帰ってほしいと願っています。小さな趣味を持つことは、人生を豊かにする大切な要素だと、改めて感じる今日この頃です。
はい、今日は3月31日、3月最終日です。今日も3月も、たくさんのお客様にご来店いただき、誠にありがとうございました。4月からはスタッフも少し変わり、キャンプ好きなメンバーも増えますので、下北沢にお越しの際は、ぜひ当店まで足を伸ばしていただけると嬉しいです。それではまた次回。
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