キャンプや一人旅のお供にしたい本をセレクトする連載シリーズ「今日の一冊」第13回めの今回は「伊丹十三の本」です。映画を見るのは好きですが、あくまでも映画を楽しむことを目的として観ていて、深く映画監督のことや時代背景の洞察など、そんな堅苦しいことはあまり調査をしない方な私。
日本映画でマジで面白いと思ったのは「タンポポ」「スーパーの女」「マルタイの女」でした。
なんかこれらの映画に同じ匂いがするな。と思って調べたら全て伊丹十三さんが監督された作品であることを初めて知って、この人スゴイ。と驚いたことからこの本を購入しました。
映画「タンポポ」を観て衝撃を受けた
女店主であるタンポポが経営する売れ行きの芳しくないラーメン屋を、カウボーイハットを被ったタンクローリー運転手であるゴローとその相棒であるガンが立て直すという物語が描かれています。この物語には、さまざまな「食と欲望」をテーマにしたサブストーリーが織り交ぜられており、独特な構成をしています。
ゴローは与太者たちとの争いの末、タンポポに恋心を抱いたまま去るという西部劇の設定があります。さらに、フランス料理やスパゲッティ、北京ダックなど、食にまつわる豊富な知識を盛り込んだ奇想天外かつ官能的なエピソードが挿入されています。この作品は、日本のラーメンブームを加速させ、アメリカで大きな成功を収めたものでもあります。
映画というフォーマットで「食事を取る」という行為を通じた人間が生きることを紐解いていくような感覚に私は、深く感銘を受けました。
妻、宮本信子さん
調べていくと、妻である宮本信子さんが腕の良い役者であるにも関わらず、なかなか主役に抜擢されないため、それだったら自分の映画の主役にしてしまえば良いのでは。という発想からキャストを決めたとのこと。夫婦愛と仕事のプロフェッショナルさが両立している素敵な夫婦です。
映画「ミンボーの女」のあとの襲撃事件
まだ暴力団対策法が施行される前はヤクザによるゆすりもかなり横行していた日本。
民事介入暴力(民暴)を専門とする弁護士、井上まひるを通じて、それまで恐怖のイメージしかついていなかったヤクザですが、彼らの弱点や盲点を映画上から世間に広めていったこの作品。
この映画が劇場公開された直後に監督の伊丹十三さんが自宅前でヤクザに襲われる事件が本当に起きてしまいました。
ただ、伊丹十三さんの暴力に撤さない姿勢で映画を作り続けた姿を知り、この「伊丹十三の本」には描かれていない、悩み、恐怖とも戦った様子に令和の今、私は思いをはせるのです。
「女たちよ!」のエッセイで書いた、伊丹十三さんのセンスの良さ
この本の中にかかれていた数々の伊丹十三さんのエピソードの中で、一番心に残ったは著書「女たちよ!」に書かれたスパゲティの茹で方のアルデンテについて触れた一説でした。
この本の紹介文を引用させていただき、この記事を以上とさせていただきます。
ありがとうございました。
「日常の振る舞いにこそ、その人となりは現れる。スパゲッティの召し上がり方、アルコールの嗜み方、サラダの本格的な作り方、クルマの正しい運転法、セーターの着こなし方、強風下でのマッチの点け方、そして「力強く、素早く」の恋愛術まで。体験的エピソードで描かれる実用的な人生論風エッセイ。真っ当な大人になるにはどうしたらいいのか? そんな疑問を持つ「男たち」へ――」